[活動報告]学校薬剤師

シリーズ・学校薬剤師

  • 学校薬剤師とは

 学校薬剤師は、学校保健安全法で定められ、1930年(昭和5年)に導入された、日本独自の制度です。幼稚園・小学校・中学校・高等学校・高等専門学校・盲学校・聾学校・養護学校に至るまで、大学を除く国立・公立・私立の学校すべてに非常勤の公務員として委嘱を受け配置されています。

 

  • 学校薬剤師のしごと

職務内容は、主に学校内の環境衛生について検査・助言を行い、児童生徒の健康増進に寄与することにあります。具体的には、

1.学校保健計画及び学校安全計画の立案に参与します。

2.飲料水、水泳プール、給食、照明、空気、換気、騒音など学校・教室の環境衛生について検査します。

3.学校の環境衛生を維持・改善するために必要な指導や助言をします。

4.健康相談や保健指導に参画します。

5.保健室の医薬品や理科室の毒物・劇物など、薬品・用具の管理について指導及び

助言をします。

6.必要に応じ、学校における保健管理に関する専門的事項に関する技術及び指導に従事します。(学校・地域社会における「薬物乱用防止の活動」に協力、「薬の正しい使い方」についての指導・助言など)

  • 学校薬剤師になるには

学校薬剤師に欠員が出ると、教育委員会が地域薬剤師会に相談し、地域薬剤師会が学校薬剤師を推薦する流れとなります。学校薬剤師には教育委員会から委嘱状を渡され、任期は原則として1年ごとの更新となります。

 

  • 学校薬剤師の活動記録(例)

平成28年度 

5月25日 飲料水検査(西校舎・南校舎・管理棟)

5月27日 教室等の空気検査(県薬検査センター職員による)

6月21日 水泳プール水検査(1回目)

7月12日 水泳プール水検査(2回目)

11月22日 教室等の空気検査(県薬検査センター職員による)

12月 1日 授業:正しい手の洗い方(2年生)

12月 6日 授業:くすりの正しい使い方(5年生)

         タバコのリスク(6年生)

2月 6日 教室二酸化炭素検査(2年2組・3年1組教室)

 3月 8日 理科薬品調査

 

 

  • 飲料水検査の実際

毎年5月に行われる飲料水検査について説明します。1年に1回学校の水道水が飲用に適切であるかどうか検査しています。学校の水道水は飲料水として毎日供給されています。子ども達が実際に飲用している水飲み場で、学校薬剤師が各自持参した検査器具(検査器具は市薬で借りられます)を用いて、遊離残留塩素・pH・水温を検査します。

 

DPD試薬による遊離残留塩素測定

水温測定

 

また、色・味・匂いを確認し、受水槽周囲や本体の状態、残留塩素測定器が学校にあるかどうかなどのチェックをします。そして水道水を指定の容器に入れて持ち帰り、大分県薬剤師会検査センターにて詳しい水質の検査をしてもらいます。

その結果は後日郵送され、自分が行った検査結果と検査センターの結果を併せて評価し、結果報告書とともに学校薬剤師としての意見書を学校・市薬・教育委員会に提出します。

飲料水は直接体に入るという点から、水質悪化は健康被害となるため、その安全性を厳しく検査します。最も問題になりやすいのが遊離残留塩素濃度です。万が一、学校薬剤師測定による遊離残留塩素濃度が0.1mg/L未満となった場合は、直ちに対策をとる必要があります。県薬検査センターでの各項目の検査結果が出るまでは飲用をひかえてもらうよう指導し、原因を考察します。最近は少子化の影響で児童生徒数が以前より少なくなり、学校での水の使用量が減っています。ほとんどの学校の水道は一旦貯水槽に貯められ、それを所要各所に給水する形態になっています。すなわち、水の使用量が少ないと水が長時間貯水槽に留まることになり、遊離残留塩素が消失しやすくなり、0.1mg/L未満になる可能性があるのです。そのため、週明けや長期休暇明けには運動場に水をまいたり、トイレに一斉に水を流したりして水を使い、貯水槽の容量を一気に減らし、水をできるだけ入れ替えるなどの提案をします。私が、初めて学校薬剤師として残留塩素を測定したとき、基準値以下であったため上記の提案をしたところ、その後は基準値内に改善されました。今年も幼稚園・小学校を回った時に、言われたことをやっていますと言っていただき、嬉しく思いました。

学校に行くと、「何してるの?」「どうやって測るの?」など、興味津々に子ども達が寄ってきて囲まれながらにぎやかに検査を進め終えます。自分はこの学校の学校薬剤師であること、みんなが飲む水道水を検査していることなどを説明します。子ども達とのふれあいを通じて様々な事を学ぶことが出来る仕事でもあり、学校薬剤師の活動を通して地域社会に貢献することが出来るという意味でやりがいを感じることができます。

 

  • フッ化物洗口液作製の実際

 

平成28年11月から行われているフッ化物洗口について説明します。大分市の12歳児のむし歯本数は年々改善しているものの、平成27年度都道府県別12歳児一人平均むし歯本数が大分県は全国ワースト2位であることから、平成28年11月より大分市教育委員会が「大分市小中学校における歯と口の健康づくり事業」を行っています。「学校におけるむし歯予防手引」(大分市教育委員会作成)に則り歯みがき指導・食に関する指導・フッ化物の活用を三本柱とし、フッ化物の活用としてフッ化物洗口が行われています。平成28年度は小中1校ずつのモデル校において実施され、平成29年度からは小学校14校、中学校2校で行われています。対象校は、順次拡大していき、平成32年度には全小中学校で実施する予定になっています。

フッ化物洗口は、歯科医の指示書に基づいて行われ、保護者の同意を得た児童生徒を対象としています。週1回で年36回程度行われ、実施日時は各学校で決定します。フッ化物洗口液を薬剤師が希釈し、教育委員会が学校に配送し、学校の保管庫で管理・保管します。実施日に学級担任が紙コップに10mLずつ取り分けて児童生徒に配り、30秒間ブクブクうがいをします。

学校薬剤師が薬局で行うことは、フッ化物洗口液の調整とフッ化物洗口液をいれるボトルの洗浄です。流れとしては、配送前日にフッ化物洗口液の調整を行い、クラス毎のボトルに入れて薬局で保管します。翌日に大分市教育員会から委託を受けた配送業者が薬局にフッ化物洗口液が入ったボトルを取りに来て学校に配送します。同日に前回配送したボトルを配送業者が薬局に持ってくるので、それを洗浄して次回の調整時に使用します。

フッ化物洗口液は、オラブリス洗口用顆粒11% 6g(1包)を332mLの水道水に溶かした濃度(約900ppm)に調整します。各クラスの人数に合わせてボトルに必要量準備します。目安としては、30人以下のクラスは332mL、30人以上のクラスは498mLです。クラスの人数に合わせてフッ化物洗口液の量は微調整します。

ボトルの洗浄は、ボトル部分とポンプ部分の洗浄を行います。ボトル部分は、スポンジブラシなどを使用して内側を洗浄し、しっかり水道水ですすいでよく乾燥させます。ポンプ部分は、コップ等に水道水を取り、ポンプを3回以上プッシュして内部を洗浄し、内部の水を出してよく乾燥させます。定期的にボトル部分とポンプ部分の消毒も行います。

実際に毎週ボトル25本分のフッ化物洗口液を調整していますが、ボトルの保管場所を確保することが大変だったり、ポンプ部分の洗浄が難しいことなど色々な課題はありますが、この事業により児童生徒のむし歯本数が減ることを期待しています。

オラブリス洗口用顆粒と溶解瓶

 

 

・プール水検査の実際

 

水泳は、水中で行われるため、生理的な特性、力学的な特性、心理的な特性などいくつかの独特な特殊性があり、それを活かして学校での授業に取り入れられています。水の中で人が泳ぐため、プール水は遊泳者を感染の源とする感染症を伝播する媒体となります。特に水泳プールは、海や川といった自然水域と異なり水量の限られた閉鎖的空間であるため、児童生徒等が衛生的かつ安全に使用できるよう、日常的に管理する必要があります。そこで学校保健安全法により学校薬剤師は学校環境衛生基準に沿って、適切なプール環境の維特についての検査や、それに伴う指導・助言を行う必要があります。

今回ここでは ①水質 ②施設設備の衛生状態 ③日常点検について紹介します。

 

①水質検査については、プールの原水は飲料水の基準に適合するものが望ましく、プール使用期間中に検査を実施し、検査は8項目の基準が設けられています。

 ア、遊離残留塩素は0.4mg/L以上であること。また、1.0mg/L以下であることが望ましいとあります。プールで感染する可能性のある細菌やウイルス等の病原体に対して消毒効果を得るために必要な濃度です。

 イ、pHは5.8以上8.6以下であることとされています。酸性に傾くと殺菌効果は強くなりますが、目への刺激が強くなり、高価なろ過装置等の金属も腐食してしまいます。アルカリ性に傾くと殺菌効果か弱くなります。中性付近を維持することが大切です。

 ウ、大腸菌は検出されてはいけません。もし検出されたら遊離残留塩素濃度が維持されていなかったことになります。検出された場合はそのままではプールは使えません。

 エ、一般細菌については、プール水1mLあたり200コロ二-以下であることとなっています。この検査は水の汚染指標として有効な検査です。

 オ、有機物等は過マンガン酸消費量として12mg/L以下であることとされています。過マンガン酸消費量は、身体の汚れ、主に垢、大小使等の汚染の指標になります。

 カ、濁度は2度以下です。濁度とは水の濁りの程度を表したものです。水1L中に精製カリオン1mgを含む場合の濁りを1度として表します。濁度は土壌やその他の浮遊物質の混入、水中の溶解物質の変化などによって数値が大きくなります。プール水中で3m離れた位置から側面が明確に見える程度が濁度2度に相当します。肉眼でほとんど透明と認められる限界の値です。

 キ、循環ろ過装置処理後の濁度は0.5度以下であること。また、0.1度以下であることが望ましいとなっています。ろ過装置の管理が確実に行われているかどうかを確認するためです。

 ク、総トリハロメタンは0.2mg/L以下であることが望ましいです。 トリハロメタンはメタン(CH4)の4個の水素原子のうち、3個がハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素等)に置き換わったもので、一般的にはクロロホルム、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルムの4種の化合物の総称です。有機物を含む水を塩素消毒することにより、その副生成物として生成されます。残留塩素濃度が高くて、水質も悪く(有機物が多く)、紫外線も強いと生成量が増えるので注意が必要です。

 

ア~キまでについては、プールの使用目の積算が30日を超える毎に1回行うことになっており、クについてはプール使用期間中、適当な時期に1回行うこととなっています。採水場所については、プール全体の水質が把握できる場所とし、長方形の一般的なプールではプール内の対角線上のほぼ等間隔の位置で、水面下20cm付近の3か所以上のサンプリングが原則となります。

 

② 施設・設備の衛生状態について

 ア、プール水は定期的に全換水するとともに、清掃が行われていることの確認が必要です。

 イ、ろ材の種類や、ろ過装置の容量及びその運転時間がプール容積及び利用者数に対して十分であり、その管理が確実に行われているかを確認する。

 ウ、塩素剤の種類は、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素イソシアヌル酸のいずれかです。凝集剤として用いるポリ塩化アルミニウムとの混合で塩素ガスが発生する事故が各地で起こっています。保管・管理状況の徹底、指導も学校薬剤師の大切な仕事になります。

 自動塩素供給装置

 砂式ろ過装置

 

③ 日常点検について

日常点検については管理記録簿を作成して、気温や水温、利用者数、遊離残留塩素濃度等を都度記録し、保管する必要があります。また、数年前には排水口の蓋の固定がきちんとできておらず、遊泳者が排水口に吸い込まれて亡くなってしまうという痛ましい事故が起こりました。排水口の蓋はきちんとボトルやねじで固定されているか日常点検でも確認しておく必要があります。

 

以上が大まかなプール水検査の実際です。これ以外にも、「藻が発生した!」とか、「いくら塩素剤を入れても遊離残留塩素濃度が上がらない!」とか、「遊離残留塩素濃度が規定値以上なのに細菌類が確認される!」などなど・・・いろいろな問題が発生して学校から相談されます。その問題を解決・指導していくのも大切な業務の1つです。

 

 

・正しい手の洗い方授業の実際

 

毎年行っている1年生と2年生の手洗い授業について報告します。

1年生は3クラスあり、1時間目から3時間目まで1クラスずつ正しい手の洗い方の話をします。まず「今のみんなの手はきれいかな?」「手がよごれるのはどんな時?」「よごれたままにしておくとどうなる?」とたずねて病気の予防には正しい手洗いがとても大切であることを話します。用いるスライドは、一年生ということで絵をたくさん使い、文字はほとんどひらがなです。正しい手洗いのポイントは最初に手を水でぬらすこと、マシュマロのような泡を作り泡でよごれを落とすこと、3分くらいかけてしっかり洗い、ヌルヌルがなくなるまでよくすすぐこと。まず、みんなで練習します。その後、蛍光液を手に塗り、手洗い場に移動して手を洗います。洗い終えたらブラックライトに手をかざし洗い残しをチェックします。きちんと洗えているつもりでも洗えていない部分が紫色に光り、子ども達は歓声を上げます。各自どこが洗えてなかったかをチェックし、配布した手のイラストの中にクーピーペンシルで色を塗ります。今後そこを重点的に心掛けて洗うよう指導します。最後に、手が汚れているのではないかと心配して1日に何十回も手を洗うのではなく、きれいにしなければならないここぞと言う大事な時に今日学んだしっかり手洗いをするように指導します。ではここぞという「しっかり手洗いはいつするの?」と聞くとみんなそれぞれ答えてくれます。「そうです、ご飯の前です」「トイレの後です」「外から帰った後です」この時にしっかり手洗いをしましょう。そうすれば体に入ると病気になってしまう悪いばいきんまんも「バイバイキーン!」で授業は終わりです。

4時間目は、2年生全員を会議室に集めての授業です。2年生は、1年生の時にブラックライトでの手洗い指導の授業を受けています。2年生になった今年は寒天培地スタンプマンを使って実際に手についている菌を目で見てもらおうというのが趣旨です。まずはもう一度正しい手洗いの復習をします。「手の洗い方は去年勉強したよね?この1年間ずっとしっかり手洗いができていたかな?」と聞くと。「はーい」と半分位の子が手を上げてくれます。「忘れてた人はまた今日やって思い出そうね」といいます。手洗い場に移動して、手を洗う前にスタンプマンに手をペッタンして、しっかり手洗いをした後にもう一つのスタンプマンに手をペッタンします。そして「その2つが明日どうなっているか比べてみましょう。また明日来ます」と言って1日目の授業は終わります。スタンプマンは大分県薬剤師会検査センターに持参し、24時間ふ卵器にて培養してもらいます。2日目、培養したスタンプマンを持って再び学校へ。テーブルにスタンプマンを出席番号順に並べ、順番に観察してもらいます。みんな実際に自分の手についていた菌を目の当たりにして驚きが隠せません。菌の状態は人それぞれです。手洗い前から菌がないもの、手洗い後も菌がでているもの、でもほとんどが手洗い前はたくさんあった菌が手洗い後は少なくなっています。「みんな上手に手洗いができてるね。でも手を洗いすぎるのも良くないです。それは体にいい菌もいなくなってしまうから」と、2年生には皮膚常在菌による皮膚保護のことも絡めて少し詳しく説明します。スライドはわかりやすくばいきんまんとアンパンマンのイラストです。

子ども達が学年のレベルに応じた指導を通じて、正しい手の洗い方を身に付け、病気から自分自身を守る方法を実践してくれることを望みます。

 

 

・「薬物乱用防止授業」参加報告

 

社団法人 日本くすり教育研究所の代表理事で薬物乱用防止教育ではご高名な加藤哲太先生による「“ダメ、ゼッタイ!”だけではない薬物乱用防止教育」についての講習会に参加し、翌日の実際の授業を見学させて頂きましたのでご報告致します。

 

日本くすり教育研究所 代表理事 加藤哲太先生

 

「薬物乱用防止授業実践」

平成29年10月31日(火)、大分市立明野西小学校にて加藤先生が実際東京都の小学校で行っている授業の実践をされ見学させて頂きました。14時からの45分授業、見学者は学校薬剤師5名、薬剤師2名、実習生5名の計12名でした。

 

内容は日本くすり教育研究所の小学校資材を少し先生がアレンジされ薬の正しい使い方まで踏み込んだ内容でした。生徒たちも内容に引き込まれており話を興味深く聞いている様子でした。特に先生が「脳は超スピードで情報を伝えるんだ!素敵な素敵な君たちの脳はすごいんだ、そんな素敵な脳は薬物を使うことで壊れてしまう、そうしたら夢も壊れてしまうんだよ」と強く生徒たちに訴え、心に残る内容で45分はあっという間でした。

 

 2日間、講演会と実践授業に参加させて頂き改めて薬物乱用防止授業に薬剤師が強く関わることが大事と痛感しました。私も4年前担当小学校から急に今年度から危険ドラッグに授業内容を変更してほしいとリクエストがあり、以来日本くすり教育研究所の資材を使わせて頂いています。各スライドのメモはかなり練られており自分の言葉で置き換えようとも試みましたが上手くいかず、現在もそのまま読むことが多いですが、

①もし薬物で逮捕された有名人がまた薬物で逮捕されても意志が弱いと思わないでほしい、必要なのは医療

②大人になると時間をかけない解決できない問題、トラブルはある。時間がかかることをダメと思わないで

以上2点を付け加えて話しています。今後はタバコと薬の適正使用について少し追加で話ができたらと思っています。

 

15年前から小学校の保健授業に関わるようになりました。以前は少数でしたが現在はほとんどの学校が行っています。小学校・中学校・高校の学習指導要領にも薬の適正使用が組み込まれ、薬物乱用防止授業に薬剤師が関わることの必要性を今回の講習・実践授業を通して再度痛感しました。

 

 

・ダニ又はダニアレルゲンの検査、照度検査の実際     

 

毎年9月に行っている高校でのダニ又はダニアレルゲンの検査、照度検査を報告します。

近年、アレルギー症状のある児童生徒等が増加しているとの指摘があります。環境衛生上、ダニ又はダニアレルゲンは、アレルギーを引き起こす要因の一つであることから、文部科学省の「学校環境衛生基準」が平成21年4月に改訂及び施行され、ダニまたはダニアレルゲンを年1回、定期的に検査することが義務付けられました。学校においては、保健室の寝具や教室等に敷かれたカーペット等でダニ数やダニアレルゲン量が多いとの報告もあり、保健室の寝具、カーペット敷の教室等、ダニの発生しやすい場所について検査することとなっています。検査には「ダニアレルゲン検査用マイティチェッカー」を使用します。マイティチェッカーをセットした掃除機で、布団などを1分間吸引した後、1分間揉んで、3秒間浸けて、10分間待つだけで確実にダニアレルゲンの検出・判定が行えます。今回は、保健室の布団と枕を検査しました。結果は、すべて<10匹/㎡の(-)判定でした。かつて>350匹/㎡の(++)判定の年がありました。保健室の布団には、必ずカバーを掛け、使用頻度等を考慮し適切に取り替えること、布団の天日干しをすること、そして必ずその後に掃除機かけをするよう提案しました。その後、学校は布団を新しく買いなおし、布団クリーナーレイコップを購入し使用しているそうです。それからは(+)になることはありません。

  

続いて照度検査についてです。教室が暗すぎたり、明暗の差が激しいと眼に負担がかかります。視力低下、学習能力低下から生徒を守り、生徒が快適に学習できるよう黒板と教室の照度を検査します。

まず目視にて確認します。 まぶしさ、異常光源など見にくい原因がないか、見え方を妨害する光沢がないか、黒板、机上に異常光沢等がないか、テレビ面等の見え方は適切か、不良な照明器具がないか、交換は適切になされているかなどをチェックします。そして、照度計を用いて黒板上9か所の照度と、教室内9か所の照度を測ります。黒板では500ルクス以上が最低限必要な基準とされています。教室は300ルクス以上です。窓側と廊下側では照度の違いが大きい場合があります。その最大最小比率を計算して基準値内かどうかを判定します。特に基準値を逸脱する場合は少ないと思われますが、逸脱した場合は改善の指導と助言を行う必要があります。

子どもたちが快適に学校で生活できるような環境づくりに検査を通じて少しでも力を注いでいきたいと思います。

 

 

・教室二酸化炭素検査の実際

 

おおよそ一日の8時間を学校で生活する児童、生徒にとって、教室内の空気環境は、快適・正常でなければなりません。教室の温熱条件や空気の清浄度は、学習意欲にも影響を与えます。

学校環境衛生の、換気の基準として、「二酸化炭素は、1500ppm 以下であることが望ましい。」とされています。

また、温度は冬期では10℃以上、夏期では30℃以下であることが望ましいです。児童生徒等に生理的、心理的に負担をかけない最も学習に望ましい条件は、冬期で18~20℃、夏期で25~28℃程度です。

換気の基準は、二酸化炭素の人体に対する直接的な健康影響から定めたものではありません。教室内の空気は、外気との入れ換えがなければ、在室する児童、生徒等の呼吸等により、教室の二酸化炭素の量が増加します。同時に他の汚染物質も増加することが考えられています。このため、教室では、換気の基準として、二酸化炭素は、1,500ppm (0.15%)以下であることが望ましいとされています。

ちなみに、二酸化炭素は、空気中におよそ300ppm (0.03%)あり、室内の二酸化炭素濃度は、5000ppm (0.5%)位から不快感(頭がぼーっとする、集中力が落ちる等)が出始めます。二酸化炭素は呼吸中枢を刺激する作用があるので、室内の二酸化炭素濃度が1%になると呼吸深度が増加し、4%を超えると肺からの二酸化炭素排出が阻害され、頭痛、めまいが生じます。ただし、室内の二酸化炭素濃度が、直接人体に影響するほど高濃度になることはまれです。

検査方法

二酸化炭素濃度測定は、授業開始前から授業終了時まで経時的に行うことが望ましいですが、時間的にもなかなか厳しいものがあります。

そのため、測定回数を1 回とする場合は、二酸化炭素濃度が高くなる授業終了直前に行うことが望ましいとされています。

検知管を用いて測定します。

【操作】検知管方式

1.検知管の先端をチップカッターに差し込み 1 回転させキズをつけ、検知管の根元を持ち手前に傾け折取ります。

2.検知管の通気方向を確認し、取付口ゴム管にまっすぐ差し込みます。

3.ボトムケースの赤線とシャフトの赤線を合わせ、ハンドルを一気にいっぱいまで引くとシ ャフトがロックされます。

4.測定場所で一定時間、試料ガスを採取し、フローインジケーターで採取の終了を確認します。

5.測定時間終了後ハンドルを右か左に90度回すとロックが外れます。このときシャフトが戻らないことを確認します。

6.規定量の採取が終了したら、検知管を取り外し濃度を読み取ります。

 ガス採取器

検知管

検知管の読み取り方法

○ 先端の変色が淡い場合は変色の濃淡にかかわらず、明らかに変色が認められる先端の値を読み取る。

○ 先端の変色がナナメの場合は、一番短いところと長いところの中間を読み取る。

授業開始時には、きれいだった空気も時間とともに汚れてきます。空気の汚れをなくすためには、換気をして、外の新鮮な空気を入れることが大切です。教室が少し寒くなりますが、空気の流れを意識して効果的な換気をしましょう。

 

 

・シリーズ学校薬剤師 総括

シリーズでお伝えしてまいりました学校薬剤師の活動、皆様いかがでしたか?

学校で子ども達と接する機会のある学校薬剤師は、普段の調剤業務からは得られない感動や発見がたくさんあります。

ご自身の卒業された学校で学校薬剤師活動をしていらっしゃる先生は、今までと違う角度から母校を見ることができて新鮮だとおっしゃいます。

お子さんが通っている学校で、学校薬剤師をされている方は、お子さんの学校での様子をPTA以外で見ることができて、喜んでいらっしゃいます。

子ども好きの先生は、検査や授業で学校に行って子どもたちとお話するのを楽しみにしていらっしゃいます。

学校薬剤師活動は、子どもたちから元気をもらえます。

毎年、何校かの学校で学校薬剤師の欠員が出ますので、興味のある方は、ぜひ大分市薬剤師会事務局までご連絡ください。